
外科医歴16年、湘南美容クリニック院長を5年間務め、日本美容外科学会正会員、美容外科学会総会で裏ハムラ法に関する学会発表歴もある現役美容外科医が、「裏ハムラ法を受けてはダメな人」について解説します。
国内のクマ取り事情
現在、国内でも目の下のクマ治療(通称「クマ取り」)は多くの方に認知されるようになり、一部の調査では2024年以降は年間10万件以上のクマ取り手術が国内で行われていると言われています。
国内のクマ取り手術の大半は脱脂術(経結膜的眼窩脂肪摘出術)と呼ばれる手術がメインに行われていますが、近年、裏ハムラ法(経結膜的眼窩脂肪移動術)と呼ばれる脂肪を取らずに凹みに移動させるクマ治療を行う医師が増えてきています。
裏ハムラ法は仕上がりのきれいさ、再発のしにくさなどのメリットも多く優れた治療法ですが、脱脂術に比べて腫れや内出血などのダウンタイムは長めで、稀ですがまつげの内反・外反、複視(ものが二重に見える)、しびれ、クマの再発などの合併症も報告されています。
今回は「裏ハムラ法を受けてはダメな人(すすめられない人)」のテーマに絞って解説しています。
裏ハムラを受けてはダメな人①
脂肪のふくらみがない人
一般的には目の下のふくらみ(眼窩脂肪の突出)がくまの原因ですが、クマが気になる人の中には脂肪自体がほとんどなく凹みがメインの方がいます。
裏ハムラ法はあくまでも脂肪を移動され平らにする手術です。大元のふくらみがほとんどない場合は目の下のくぼみを改善させることは難しくなります。
近年はクマ取りを行うクリニックの増加に伴い、以前に他院で脱脂術を受けて凹んで影クマ(黒クマ)が悪化しまった方の修正依頼も増えています。
裏ハムラ法を習得して症例数がまだ少ない医師において、目の下のくぼみがあるだけで裏ハムラ法をすればよくなると説明し治療トラブルになるケースもあります。
裏ハムラ法も基本的には眼窩脂肪によるふくらみを改善させる手段(目の下のくぼみの改善は副次効果)という理解が重要です。
治療法は?
- 脂肪注入やヒアルロン酸による注入治療
- 他部位脂肪組織(バッカルファット等)の移植
裏ハムラを受けてはダメな人②
皮膚の伸びやシワが強めにある人
個人差はありますが40歳以降からまぶたの皮膚の伸び・たるみやシワが徐々に目立つようになり、50歳以降ではより強くなります。
目の下の皮膚を優しくつまんでから離してみて弾力性が残っている場合(ピンチテスト)は、50歳以降でも裏ハムラ法などの切らない治療で改善可能ですが、皮膚の戻りが遅い・ゆっくりな方、目の下の刻まれたシワが気になっている方は皮膚の弾力性がなくなってきており皮膚切除法(表ハムラ法、皮膚除皺術)が必要になる場合があります。
治療法は?
- 表ハムラ法(切開ハムラ法)や皮膚除皺(じょすう)術などの切開法
- 炭酸ガスフラクショナルレーザーや高周波治療
(※切開適応の皮膚の伸びやシワには効果は限定的です)
裏ハムラを受けてはダメな人③
ヒアルロン酸・脂肪注入・目元の肌育治療・FGF添加PRP治療などによるしこりが疑われる場合
上記の治療を目元に受けたことがある方で、その後に目の下のふくらみの症状が出てきた場合は「注入治療によるしこり」が原因の可能性があります。
このような治療後のしこりは皮膚の浅い層や眼輪筋の間に形成されていることも多く、通常の裏ハムラの手術範囲ではない浅い位置にあり裏ハムラを行ってもふくらみが残ってしまう可能性があります。
治療法は?
- ヒアルロン酸であればヒアルロニダーゼによる溶解
- 皮膚切開によるしこり除去
注意点としては切開系も行っている医師で、クマ治療に最低5年間以上は従事している専門性の高い医師が望ましいです。
クマ治療に従事してからある程度の年数を経ないとしこりによる目の下のふくらみを眼窩脂肪のふくらみと誤診し治療トラブルが起こるケースが散見されます。
実際に「名医」「クマ取り専門」などで出てくる医師は医師歴や美容外科医歴が浅い医師が多い印象です。
検討されている医師のSNSアカウントの過去の症例の履歴をたどることでその医師がおおよそどれくらいの時期からハムラ法や切開法を始めたかが分かり参考になります。
「形成外科専門医」や「外科専門医」であっても日常的にクマ治療の症例をあげていない場合も修正治療に対応できるかは未知数です。
裏ハムラを受けてはダメな人④
過去に裏ハムラを受けたことがある方の再手術
比較的再発しにくい術式である裏ハムラ法ですが、ふくらみが残る・再発するという可能性もゼロではありません。
裏ハムラの再手術に関しては絶対に受けてはダメということではありませんが注意が必要ですので以下に解説いたします。
もともとの眼窩脂肪の量が多く裏ハムラを受けてから半年後以降もふくらみがまだ気になる場合には適量の脱脂を行うことで改善可能です。こちらは比較的手術リスクは低めで安全に受けられます。
前医での裏ハムラ法での脂肪の移動量や固定が不十分な場合は再度裏ハムラを行う場合があります。
一度裏ハムラを受けている場合は手術を受けた眼窩脂肪の周囲は比較的強めに癒着しています。
癒着をはがす際にはより繊細な解剖的な知識・繊細な外科技術・経験が必要になります。
硬くなった組織を無理にはがしたり、引っ張ることで複視やしびれ、まつ毛の外反の可能性もあるため、ハムラ法を含めたクマ治療に長い期間従事し経験豊富な医師の元での再施術をおすすめ致します。
また50歳以降の方の場合、ふくらみが残っている原因が皮膚のたわみによる可能性もあります。
この場合は脱脂や裏ハムラの再施術では改善は難しいため余った皮膚を切除する方法をおすすめされることがあります。
治療法は?
- クマ治療の経験が豊富な医師での再施術は可能です
- 少量の脱脂を行うまたは裏ハムラ法の再施術、50歳以降では余剰皮膚切除も考慮
「裏ハムラを受けてはダメな人」4つのポイントのまとめ
- 脂肪のふくらみがない人
- 皮膚の伸びやシワが強めにある人
- 注入治療によるしこりが疑われる場合
- 過去に裏ハムラを受けたことがある方の再手術
こちらの4つに該当すると裏ハムラを受けるのが絶対にダメという訳ではありませんが注意が必要なポイントになります。
担当の医師とよく相談をしてから治療法を検討されてください。
美容医療にかかわる全ての人が幸せになるために
今回の記事はクマ取り治療における美容クリニック選びや治療選択で失敗して悲しい思いをする方を一人でも減らしたいという思いで執筆しています。
筆者も裏ハムラ法を多く執刀する術者ですが裏ハムラ法も万能治療ではなく適応の見極めが非常に重要です。
これからも読者の方にとって有益な情報を発信していきます。