
外科医歴16年、湘南美容クリニック院長を5年間務め、日本美容外科学会正会員、美容外科学会総会で目の下のクマ治療に関する学会発表歴もある現役美容外科医が、「脱脂を受けてはダメな人」について解説します。
最近はAIによるまとめ記事も多いですが、この記事は実際の臨床経験をもとに医師が直接執筆し詳細に解説しています。
国内のクマ取り事情
前回の「裏ハムラを受けてはダメな人」のコラムでもお話しさせて頂きましたが、現在、国内では目の下のクマ治療(通称「クマ取り」)は多くの方に認知されており、年間10万件以上のクマ取り手術が国内で行われていると言われています。
国内のクマ取り手術の大半は脱脂(経結膜的眼窩脂肪摘出術)と呼ばれる手術がメインに行われています。

脱脂は表に傷を置かずに目の下のふくらみの原因となっている眼窩脂肪を取る術式で、美容外科の手術の中では比較的難易度は低めの手術に分類されます。
手術時間やダウンタイムも比較的短く適応のある方に行えば満足度の高い治療法ですが、脂肪の取りすぎ・取り残し・再発、凹みが出るなどのリスクもあります。
今回は「脱脂を受けてはダメな人(すすめられない人)」のテーマに絞って解説しています。
脱脂を受けてはダメな人①
目の下の痩せ・凹みが強い人
目の下の痩せが強く、目の下の脂肪が少ない方に脱脂はおすすめしにくいです。
その理由としては、眼窩脂肪は眼球を支える重要なクッションの役割があり、目元の痩せが強い方が脱脂を受けることで目を支えるクッションが減り目の下の凹みやシワ、目の上のくぼみが目立つようになる可能性があるためです。
こちらの写真のようなお目元の方が該当しますのでご参照ください。

近年はクマ取りを行うクリニックの増加に伴い、以前に他院で脱脂術を受けて凹んで影クマ(黒クマ)が悪化してしまった方の修正依頼も増えています。
目の下の痩せがある方は裏ハムラ法や注入治療による改善が見込めますので、「まずは脱脂して、気になる際はヒアルロン酸や脂肪を注入しましょう」という安易な言葉に惑わされないようにしてください。
治療法は?
- 裏ハムラ法
- 脂肪注入やヒアルロン酸による注入治療
脱脂を受けてはダメな人②
皮膚の伸びやシワが強めにある人
目の下の皮膚の伸びやシワが気になっている方は脱脂を受けることでシワが悪化する可能性があります。
「裏ハムラ法がダメな人」のコラムでもお話しした内容ですが、40歳以降からまぶたの皮膚の伸び・たるみやシワが徐々に目立つようになり、50歳以降ではより強くなります。
目の下の皮膚を優しくつまんでから離してみて弾力性が残っている場合(ピンチテスト)は、50歳以降でも切らない治療で改善可能ですが、皮膚の戻りが遅い・ゆっくりな方、目の下の刻まれたシワが気になっている方は皮膚の弾力性がなくなってきており皮膚切除法(表ハムラ法、皮膚除皺術)が必要になる場合があります。

治療法は?
- 表ハムラ法(切開ハムラ法)や皮膚除皺(じょすう)術などの切開法
- 炭酸ガスフラクショナルレーザーや高周波治療
(※切開適応の皮膚の伸びやシワには効果は限定的です)
脱脂を受けてはダメな人③
目の下にできる線(ティアトラフ)が強い人
目の下のふくらみの下にある線を「ティアトラフ」と呼びます(正確な位置はティアトラフよりやや下になりますが、総称として「ゴルゴライン」や「ゴルゴ線」と呼ばれることもあります)。
顔の深いところにある筋肉や脂肪を支える靭帯(リガメント)の強さによって線の出方には個人差があり、ほとんどない人から線が強い人まで様々です。


脱脂を受けるとこのティアトラフが逆に目立ってしまう場合があり、この線が気になっている場合は脱脂では改善できません。
クリニックによっては凹みにヒアルロン酸や脂肪の注入をすすめられますが線が強い方は改善しないことが多いです。
この「ティアトラフ」を改善させる方法はハムラ法になります。
ハムラ法では靭帯をはずして自分の脂肪を移動させることで線が目立たなくなります。
他の治療法で強いティアトラフを根本から治療できる手段は現在のところほとんどありません。
治療法は?
- ハムラ法 皮膚の伸びがなければ裏ハムラでOKです
脱脂を受けてはダメな人④
1つのクリニックのカウンセリングのみで治療を決める
現在日本で目の下のクマ取りを行っている美容外科クリニックのほとんどが次のいずれかの治療を行っています。
- 脱脂のみ
- 脱脂+脂肪注入
- 脱脂+ヒアルロン酸
- 裏ハムラ法
- 切開法
それぞれのクリニック、ドクターには得意としている治療がありSNSやホームページの症例写真をみることでそのクリニックが得意としている治療の内容は分かるかと思います。
自分自身を含めたほぼ全てのドクター・クリニックに該当することですが、受診されたお客様に自分のクリニックで何かしらの治療を受けて欲しいと考え治療を提案します。
今回解説したようにクマのタイプによっては脱脂で悪化してしまう方が一定数いますが、脱脂専門クリニック、脱脂+注入を専門としているクリニックでは脱脂をしない方が良い方にも現実的には治療が行われることがあります。
本来は脱脂の適応ではない方に治療を行うことで凹みやシワなどの症状が出てクマが逆に悪化してしまうこともあるためクマ治療は適応の判断が非常に重要ですので、複数のクリニックでカウンセリングを受けて自分に合った治療法を検討されることを強くおすすめします。
この記事では特定の治療やクリニックを下げる意図は全くありません。
脱脂も適応の方に行えば非常に良い治療であり、取りすぎ・取り残しなど繊細な手術のバランスも求められますので、脱脂の適応がある方が症例数の多い脱脂専門クリニックで治療を受けられることは良い選択だと思います。
治療法は?
- 複数のクリニックでカウンセリングを受け治療のアドバイスをもらいましょう
「脱脂を受けてはダメな人」4つのポイントのまとめ
| ① | 目の下の痩せ 凹みが強い人 | ![]() |
| ② | 皮膚の伸びやシワが強めにある人 | ![]() |
| ③ | 目の下にできる線(ティアトラフ)が強い人 | ![]() |
| ④ | 1つのクリニックのカウンセリングのみで治療を決める | |
美容医療にかかわる全ての人が幸せになるために
今回の記事はクマ取り治療における美容クリニック選びや治療選択で失敗して悲しい思いをする方を一人でも減らしたいという思いで執筆しています。
筆者は裏ハムラ法を多く執刀する術者ですが脱脂も適応の方をしっかり選べば非常に良い治療だと考えています。
これからも読者の方にとって有益な情報を発信していきます。



